世界的に難民が増加している中、各国で難民を起業家として輩出し、経済的な自立を実現しようという試みがなされています。
今回は、フィンランドの「Startup Refugees」とカナダの「Refugee Career Jumpstart Project (RCJP)」の 2つの取り組みについて紹介します。

▪️Startup Refugees (フィンランド)

中東の情勢悪化により膨大な数の難民がヨーロッパに逃れていますが、北欧諸国は難民に寛容な国として知られてきました。しかし熟練した職業経験を持つ難民であっても、異国の地で職業に就くことは難しいものです。

そんな現状を変えるため、フィンランドのStartup Refugee では、難民の雇用を生み出すオンラインサービスを運用するとともに、難民自らの起業をサポートしています。

雇用支援のサービスは、難民がフィンランドの雇用に適した履歴書を作成できるよう支援するものです。履歴書はオンライン上のデータベースにアップロードされ、難民と企業がマッチできるようプロフィールを検索できるようになります。
2018年10月の時点で、このサービスは17都市で2,700人以上の難民のプロフィールを集め、500人分の雇用機会をもたらしました。現在も登録者数は拡大しており、難民雇用における革新的なサービスとなっています。

さて、難民起業支援では、難民のアイデアを収益性の高いビジネスに変えていくことを目的とした、3ヶ月間のプログラムを開催しています。このプログラムは500人以上の専門家によってサポートされており、フィンランドを代表する大企業、例えばSupercell(ゲーム開発会社)、Slush(スタートアップイベント開催団体)、Futurice(エンジニアコンサルタント会社)、Tieto(IT企業)から専門知識を吸収することができます。
優秀なメンターに出会えることに加えて、法的、行政的および財政的問題で支援を受けることができたり、顧客のニーズを知るマーケティング方法を提供してもらえたりします。実際にStartup Refugeeは難民が運営する60以上の起業を支援してきました。

また、難民女性の社会地位を向上させるため、女性に特化した起業支援プログラムも行っています。仕事、教育、そしてビジネスの機会を提供すると共に、参加者同士のつながりを築き成長するための環境を作っています。

https://startuprefugees.com

▪️Refugee Career Jumpstart Project (カナダ)

国レベルで充実した支援体制を目指し、難民受け入れを積極的に行うカナダには、民間の難民支援団体も数多く存在します。

その中の1つであるRefugee Career Jumpstart Project (RCJP)は、2015年に設立され、難民の到着から彼らの雇用までのプロセスを合理化することに焦点を当てています。

RCJPが行っているプロジェクトの中に、投資会社であるAngel Investors Ontario と共同で開催している難民起業家支援プログラムがあります。このプログラムはパイロット段階にありますが、今回は50人のシリア難民を迎え、2019年1月から4月にかけて行われています。

革新的なビジネスアイデアを持っている難民は、起業への知識を深めるため、ワークショップやAngel Investors Ontarioの投資家から直接指導を受ける機会を得ることができます。コンペティション方式で行われるため、 起業を目指す難民は投資家に彼らの考えを具体的かつ実践的に示さなければなりません。

このプログラムには業界の専門家とAngel Investors Ontarioの投資家による半日のトレーニングセッションが2回含まれ、参加者はビジネスアイデアの検証、ビジネスプランの作成、チームやアドバイザリーネットワークの構築、補助金、資金調達ついてありとあらゆることを学びます。
最終的に5人の起業家が選ばれ、 優勝した起業家はビジネスを成長させたり、始めるための資金を受け取ることができます。

http://www.rcjp.ca/angels-refugee-entrepreneursprogram

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一括りに「難民」と言えど、個人の持っている能力や技術は様々です。しかし、逃れた先で法的に働くことができなかったり、母国で有効であった資格が認められなかったりするために、能力を活かせず安定した職に就けない難民は多く存在します。
フィンランドのStartup Refugees、カナダのRCJPは、起業を支援することで、難民の持つ高いポテンシャルやアイデアを評価し、難民の能力が最大限に活かせるよう働きかけています。各国でこのような取り組みが増えることにより、難民にとって起業のチャンスがより身近なものとなります。多くの「難民起業家」を輩出できれば、その家族や従業員など、何倍もの難民の生活と社会に前向きな影響を与えることができます。

ESPREにおいても、このような事例も参考にしながら、難民起業家へのよりよい支援を生み出していきます。