皆さま、いつもご支援をくださり、ありがとうございます。
ESPREは難民という背景を持ちつつ起業を目指す「難民起業家」をサポートしていますが、日本ではその存在はまだまだ多くの方には知られていない状況です。
しかし、世界的には、実はよくある現象でもあります。
そこで、今後このページで、いくつかの「世界の難民起業家」をご紹介して参ります。
今回は、中東出身の難民の2つの事例です。
イスタンブールのお菓子屋
トルコでは、シリアで紛争が起きた2011年から4,000件も新しい事業が増えており、シリア難民の人たちは難民キャンプで事業を始める事例だけではなくイスタンブールのような都市で活躍している方々もいます。シリア難民となってしまったRemoさん。彼は様々な場所での困難を乗り越え、彼も大都市イスタンブールで起業家となり活動しています。
Remoさんは今から三年前、反政府組織によっての空爆や市街地の建物の崩壊などの甚大な被害が出ているシリアのアレッポから、生活必需品と家庭の味のレシピだけを持って逃れました。初めはエジプトに到着し、お店を開きました。しかし、エジプトの人たちは貧しく、事業が成り立たなかったと言います。
次に彼はレバノンへ逃れました。持ち金を全て出して大切なレシピを頼りにお菓子屋さんを開きますが、シリア人だというだけで差別にあい、お店を閉ざさるをえなくなりました。
その後、Remoさんはトルコのイスタンブールに移りました。イスタンブールに着いたばかりの時は小さなお店を借りることしかできませんでしたが、家族に受け継がれているパイ菓子などのデザートのレシピの可能性を信じ、またお店を開くことにしました。
失敗を乗り越えた甲斐があって、イスタンブールでのお店は繁盛しました。現在、4階建ての工房付きの店舗で働き、40人を雇用して3店舗目を開く予定でいるほど大きくなっています。
Source: Syrian refugee entrepreneurs boost Turkey’s economy (Financial Times, MAY 16, 2016)
ブリュッセルのパソコン修理店
Saidさんは故郷のイラクで工学部の学生でした。彼は学生をしていた傍ら、サダムフセインと対抗しているグループのために暗号を送信できるシステムを開発しました。やがて、その対抗グループが鎮圧され、Saidさんの共謀者の何人かは捕らえられ、処刑されてしまいました。Saidさんも捕えられるのは時間の問題であり、国を逃れる決断をしました。
彼は難民としてベルギーへ入りました。ベルギーで彼がイラクで培った技術を使ってパソコンを治すビジネスを展開しようとし、いくつもの銀行にお店を開くための3,000ユーロの融資のお願いをしに行きました。しかし、難民だという理由でどこへ行っても融資を拒否されてしました。
そこで彼が向かったのが microStartでした。microStartはヨーロッパで活動しているマイクロファイナンス機関であり、普通の銀行にお金を借りに行くことができない低所得者や難民の可能性を信じ、融資の機会を提供しています。
今では借りることのできたお金によって事業を進められ、彼のスキルもあってパソコン修理のお店は成功しています。
Source: Finding financial refuge (European Investment Bank)
日本では・・・
日本では、Sadiさんと同様に、難民が起業するにあたって利用できる金融手段は限られています。また、B2Cの事業をするとすれば日本の顧客を対象とすることが多いですが、出身国とは異なる顧客の嗜好に対応して行くにあたっての苦労もあります。さらに、安定した在留資格をなかなか得られないことも、大きな不利となります。
しかし難民自身は強い思いを持って、起業に挑戦しています。その中には、今回ご紹介した方々と同様に、もともと持っていたスキルを活かして起業するような人々もいます。日本に来てから経験を積んで、起業に進まれる方もいます。
私たちESPREは、まずは民間として挑戦する「難民起業家」を支えていますが、日本に滞在する難民が次第に増える中で、インフラとして取り組みを広げていきたいと考えています。
執筆:平塚、吉山
ESPREでは、RemoさんやSaidさんのように、国を逃れて新たな地で起業という挑戦をしようとしている「難民起業家」をサポートしています。そして、いくつかの成功事例も生まれてきています。ぜひ、皆様のご協力をお願いいたします!
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