先週8月1日に、不定期に発行しているメルマガ”ESPRE Update”(ご登録はこちらから)を発行しました。
今回は、6月に実施した新規の2件の融資についてご報告しました。
ぜひ、ご覧ください。

ESPRE Update – 2016/8/1

お世話になっております。ESPREの吉山です。
ESPREのご報告を本当に長らくご無沙汰をしてしまい、失礼いたしました。

前回、難民向けの起業セミナーについて、ご報告しました。その際に、「これまでの支援先の近況について、ご紹介したい」と申し上げておりましたが、時間が経過し、幾つか進捗がありました。その最も大きなものは、新規に融資をできたことです。

そこで予定を変更し、6月に実施した2件の新規の支援先”難民起業家”について、ご報告したいと思います。

セミナー後、難民起業家からの相談が増加してきました。

1月にセミナーを実施したのち、次第に難民の方々からの起業や起業支援に関する問い合わせが増えてきました。

ESPREの事業についての認知が、難民の間と、難民支援協会をはじめとする支援団体の間で少し広がったからかもしれません。

ご相談頂ける事業プランも、多様になってきました。

レストランや輸出は、以前からよく行われています。これまでのESPREの融資先・支援先も、中古車輸出や、民族料理レストランでした。

最近ご相談いただいている事業は、これらもありますが、輸入小売や、民族料理ではない飲食店、ITなどにも広がってきました。

例えば、あるアフリカの国からの難民は、アフリカの服を日本で売ろうとしています。しかも、将来的には日本での縫製も考えたいとのこと。
また、別の方は、カフェを開きたいと言います。

事業としてみるとまだ荒削りであったりもしますが、相談を受ける側としても、楽しみが多いものでもあります。

そして何より、事業の多様性が増えることで、より多くの難民の経済的自立への希望にも応えられることになると考えています。

そんな中、2件の事業への融資を決定しました。

1件は、中古車の売買をしようとしているAさん夫妻。もう1件は、スマホなどのアプリを作ろうとしているBさんです。

[中古車の売買]

日本の中古車は品質も良く、世界的に好評を得ています。その輸出にパキスタンの方が多く従事していることは、ご存知の方も多いかもしれません。ESPREの第1回融資先も、パキスタンの方による中古車輸出業でした。

Aさん夫妻もパキスタンから逃れた難民です。子供もいる中でアルバイトでは生活が非常に厳しく、友人の勧めもあり中古車輸出を考えました。しかし銀行などから借り入れを考えることもできず、ESPREに相談にいらっしゃいました。

ただ、問題はやはり、資金です。自ら輸出をしようとすると数百万円は用意することが望ましいのですが、これまでの仕事では蓄えなどできない。一方でESPREからの貸出上限は100万円ですので、足りません。

そこで、ESPREのプロボノの方々にもご参加頂き、ご夫婦とともに現在調達可能な資金でどのような事業を行うことができるか、議論を行いました。その結果、考えられたのが、中古車の日本国内での売買です。

中古車は、オークションのシステムが整備されており、仕入れができれば、日本国内で販売することができます(オークションへの参加権は必要)。そして、Aさんは友人を介して、複数の自動車修理業者とのつながりを構築できていたことから、中古車を仕入れることが可能でした。これまでの仕事も続けられますので、中古車取引による追加の収入により、生活を改善していくことが期待されます。

ESPREでは100万円の融資上限を設定しており、従来の支援先は他の資金源によって事業を開始できていた方ばかりでした。しかし、「起業支援」というからには、今回のようなケースも是非支援したいと考え、融資審査委員会の審査を経て、融資実行を判断しました。

現在は開始後1ヶ月ほどで、2台の車両を販売して収入を得ることに成功したとのこと。引き続き事業を続けられますので、ESPREとしても支援していきます。

[モバイルOSアプリ販売]

近年、iOSを始めとするモバイル用OSが普及し、ソフトウェアの制作・販売が容易になり、かつ世界を対象にできるようになりました。難民の起業においても、この環境を生かすことができるのではないかと考えてきました。ただ、これまでESPREとしてITについて学ぶ機会は作ってきませんでした。

Bさんからのコンタクトは、前回お伝えしたセミナーへの申し込みが最初でした。

曰く、私はITに関して多くのスキルを持っており、多くの方に使ってもらえるサービスを作ることができる、セキュリティ対策も伝えられる・・・。

正直な所、どこまで話を信用して良いのか、わかりませんでした。

ただ、アピールしたいことはとても伝わってきましたので、何度か議論を繰り返したのち、一度技術を見せる見本を作って見せていただくのが良いとお伝えしました。

作ったので面談したい、と申し込みがあったのは、1ヶ月以上経ち、もう連絡がこないか、と思いかけていた頃でした。

持ってこられたのは、iOS用のゲームアプリなど。未完成ですが、しっかりと動くものでした。

それぞれのアプリは、荒削りで、単純なものもありましたが、ちゃんと作ってこられたこと、そして数を作ってこられたことを、私たちとしては評価しました。

アプリ市場は、AppleがApp Storeを立ち上げてから8年が過ぎ、アプリの数も多く、ビジネスとして成立させるのは容易ではありません。一方で、低コストで参入できることは、資金を貯めることが難しい難民にとって、大きなメリットとなります。Aさんのケースと同じく、ESPREにとってソフトウェア領域での起業支援には意味があります。そして、このBさんは、多くの試行をする意欲がある。

そこで、事務局として支援したいと考え、融資審査委員会の審査を経て、融資実行を判断しました。なお、事業特性上資金ニーズは大きくはありませんので、これまでの融資先と比較して、かなり少額の融資となっています。

2件の「難民起業家」を含め、難民の挑戦をこれからも支援し続けます。

現在、上記の通り、今回の融資先以外にも幾つかの相談をいただいています。

今後、これまでの支援先に加え、この2件の事業を進めている難民起業家のAさん、Bさん、そして他にも相談を始めている方々に対して、事業の相談に応じ、それぞれの挑戦への支援を続けてまいります。

なお、今回の2件の融資先は、従来と異なりいずれも難民申請中です。そのため、お名前などの情報を開示できないことをご理解ください。

ただ、今後も可能な範囲で、できるだけ経過を共有させていただきます。引き続き、難民の挑戦にご注目いただき、応援していただければ幸いです。

<ReadyFor?を含む、ご寄付をくださった皆様へ>

今回の融資、および融資前後の支援は、ご支援いただいた資金のおかげで実施することができました。改めて、御礼申し上げます。
また、これまでの融資については問題なく返済されていますので、再び融資に活用してまいります。

<ReadyFor?のご支援者のうち、「民芸品」を選択された方へ>

品物の送付が未だにできておらず、申し訳ございません。ようやく品物を揃えましたので、今週中には送付をいたします。お受け取りいただければ幸いです。

これほどまでに遅れたことを、お詫び申し上げます。

次回は、上記の2件を含むこれまでの支援先の近況をお伝えできればと思います。

引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

難民起業サポートファンド
代表理事 吉山 昌

引き続き、みなさまのご参加、ご支援もお願いしております。

「難民起業」の動きは、次第に広がっていると感じています。ただ、私どもの力不足もあり、まだまだ十分な支援をできておりません。

どの事業にも共通する、経営・財務戦略の支援、立ち上げ時や立ち上げ後の様々な調査・検討の支援、プロモーションの支援などについて、プロボノ・ボランティアを引き続き募集しております。お手伝いいただける方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください。

また、さらに融資と支援をするために、ご寄付も不可欠です。毎月1,500円からの継続寄付の仕組みもありますので、ぜひウェブサイトから、お申し込みください。