1/23(土)、難民起業家向けの「日本でのビジネス スタートセミナー」を、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社のご協力で、同社オフィスにて開催しました。
今回のセミナー開催の目的は、「日本で事業を始めたいと考えている難民の方々に、起業というオプションについて考える機会を作ること」です。そのため、起業のベーシックとESPREのサポートについてお伝えすることとしました。
参加者は、起業を目指す難民9名。この他、セミナー講師3名と、その関係するビジネスコンサルタント、税理士など10名以上が協力してくださいました。セミナーは全3部の構成で、講師は先輩難民起業家、ビジネスコンサルタント、税理士。もともと日本語・英語両方での開催の予定でしたが、今回の参加者は全員英語を話せたため、英語中心での開催に切り替え、より詳しい説明をすることが可能になりました。
質疑応答では、参加者から多くの質問がありました。中には非常に具体的なプランを持っている参加者もおり、例えば「実際にどの地区でビジネスを行っていくか」についてディスカッションを行う場面もありました。また、セミナー終了後には各講師やESPREの担当者と直接話せる相談会も開催。先輩起業家アセフ氏のもとにはたくさんの人が集まり、熱心にアドバイスを聞く姿がありました。
最後に記入してもらったアンケートには「次回もぜひ参加したい」という意見もあり、セミナーは盛況のうちに終了しました。
各セミナーの主な内容
(1)「起業という挑戦」:難民起業家より
最初のセミナーは、中古車輸出業を営む難民起業家・アセフ氏による自身の体験談とアドバイスでした。彼が難民として日本で起業する際に直面した大きな壁は主に2つです。1つ目は、まず他の企業(パートナー企業)とのコネクションづくり。創業時、日本国内に他の企業とのコネクションがなく、ビジネスを進めていくことが難しかったアセフさん。その困難を乗り越えるために、まず、創業当初の顧客を通してコネクションを作っていき、日本の市場へだんだんと入っていけるようになったと言います。
2つ目の壁は、ローンを借りること。創業当初、必要な資金を確保しようと様々な銀行に交渉しましたが、どの銀行もたとえ少額の融資でさえ取り合ってくれませんでした。しかし、ちょうどその頃にESPREがスタートし、ESPREからの融資を得たことが転機になったと言います。アセフさんは「ESPREの融資額は大きいものではない。しかし、当時の自分にとっては高額のローンと同じ価値があった。」と語りました。
現在は5カ国以上にショールームを設置し、世界中にパートナー起業を持つアセフさん。かつて融資を断わられた銀行からも、今は多くの営業が来るといいます。セミナーの最後には自社の規模をさらに大きくしていくという今後の夢を語ってくれました。
(2)「どのようにビジネスを作るか」:ビジネスコンサルタント 栗原直樹氏
2つ目のセミナーは、栗原直樹氏(株式会社クニエ)による、ビジネスアイデアを具体化するメソッドについてでした。まず、ビジネスを実際に形にするためには、各自のアイデア(例えば、貿易や飲食店開業)を育てていく必要があります。そして、より具体的にビジネスを考えていくためのフレームワークを紹介。様々な視点から自分のビジネスについてより深く考えることで、その後さらに何を知るべきか、考えるべきかが見えてくると語りました。
(3)税務についてのレクチャー:税理士・行政書士 早坂毅氏
3つ目のセミナーは、税理士・行政書士である早坂毅氏による、日本の税金の基礎とビジネスに関する講義でした。まず、起業する際の手助けとなる専門家(弁護士、公認会計士、税理士など)についての説明がありました。その後、日本の税金制度の基礎と、実際にビジネスを始めた際の収益、コスト、各種控除、課税所得の関係性についての解説がありました。
参加者の様子や声と、今後のESPRE
セミナー後には、活発な質疑応答が行われました。各講師およびESPREによる相談会は行列ができ、予定時間を少し延長して熱いディスカッションが行われました。
例えば、日本からの中古品を輸出しようと考えているAさん。すでに「どうやってビジネスを進めていくべきか」という具体的な段階に入っていました。インターネットで販売を始める方法、価格の決め方、税関についてなど、より実践的なトピックについての質問をしていました。
また、日本への洋服の輸入を考えているBさんは、ビジネスアイデア自体はかなり具体的になっているものの「日本での難民という立場やお金の問題という壁に、どうやって向かっていけばわからない」という不安を語りました。
終了後の参加者アンケートには、以下のようなメッセージが書かれていました。
「本日参加できて本当に良かった。次回もぜひ参加したい。」
「もっとこのようなセミナーを開催してほしい。そうすれば起業についてもっと学ぶことができる。」
「起業に興味をもっているので、今後ESPREのサポートを受けていきたい。」
このような参加者の様子を見て、ESPREは今後も今回のように起業に関する知識を伝える場やワークショップを開催し、新たな難民起業家が生まれる土壌を作っていきたいと考えています。イベント全体を通して、彼らはビジネスを始める最初の時点で多くの困難を感じていることも改めて認識しながらも、自分たちの思いを新たにしたと思います。今後、様々なニーズを持った参加者と相談を重ね、支援を提供していきます。