2013年3月21日
難民起業サポートファンド
事務局長 吉山 昌
2013年3月1日に、難民起業サポートファンド(ESPRE)は公益認定1年を迎えました。
この間、皆様のご協力・ご支援を頂きながら、少しずつではありますが、成果を上げることができました。年度の途中*ですが、お礼と共に、ご報告と今後のご案内をしたいと思います。
* 当年度は2013年6月30日まで
事業開始、募集、そして融資へ
この1年は、始まりの年と振り返ることができます。融資・支援先の第1次募集を開始し、経営支援と初めての融資まで実施することができました。
第1次募集に対しては4件のご応募を頂き、3件に対して具体的な聞き取りと経営支援を実施*。そして、そのうち1件に対して10月に融資を行っています。
* 応募された事業: 中古車輸出、アクセサリ製造・輸入、つけ麺店、リサイクル業。うち前者3件を支援先として選定
難民起業家への経営支援としては、売上向上を目的としたサービス内容や顧客ターゲットなど事業計画の議論や、店舗探しの支援などを行いました。
融資先について
第1号融資先は、既報の通り、中古車事業を営んでいるパキスタンからの難民のアセフ氏*です。来日後はインド料理店の経営を行い、また中古車事業は自らの力量でパートナーを見付けてオーストラリアなどに販売するなど、バイタリティあふれる起業家です。
* 融資当時は個人が特定される情報の公開を避けるよう要請されていましたが、最近公開が許容されました。
融資を実施した昨年10月は、モザンビークの店舗を開設してまだ日を経ない時期でした。すでに政策金融公庫等からの融資を獲得していましたが、販売車両を調達する資金は十分ではなく、ESPREからの融資も仕入に活かされました。中古車小売を継続的に行うためには、品揃えがある事も重要なのです。彼は、「借りられた100万円は、(軌道に乗りつつある)現在の1千万円ほどの価値があったと感じる」といいます。
その後、ユーザーへの小売に加え、ディーラー向けの卸売も開始、また2号店も開設し、さらに事業を拡大しています。これにより、売上げは急速に伸びており、当年度売上げは昨年度の2倍程度になることが見込まれています。
少しでも、一人の難民起業家の成功に寄与できたことは、非常に嬉しく思います。今後はESPREとしては回収に入りますが、新たな投資に向けた資金調達など、支援できることがあれば提供していきたいところです。
新たな難民起業家からのアプローチ
さて、第1次の募集は早期に締め切りましたが、その後も数件のアプローチを受けています。その中には、民族料理店、ラーメン店、通訳・翻訳事業、建築関係などの事業が含まれます。
事業のステージや、支援ニーズは様々です。これから事業を開始する方もいれば、事業は軌道に乗りつつあるものの設備投資資金が必要な方もいます。すでに、それぞれの方々とは事業内容について議論を進めていますが、公平を期すため、具体的な経営支援や融資は、第2次募集を行ってからとなります。
課題 – 難民起業家にとって、そして社会にとって
この1年間、難民起業家を支援するなかで、いくつかの課題に直面しました。
難民起業家にとっては、様々な意味で、資源の乏しさが課題となっています。ある者は、商品・サービスをつくる上での経験や技術は確かですが、経営について学んだことが全くなく、手探りで事業を進めています。日本市場については、これまでの経歴によっては、あまり理解できていない者もいます。難民であるという立場による本国との関係の制約が、事業の制約になってしまう場合もあります。
社会の側には、難民に対する壁が立ちはだかります。飲食店などの店舗を借りるのは、いずれも相当の苦労を伴います。金融機関から借り入れを行おうとしても、やはり難しさがあります。
ただ、確実に言えるのは、置かれた状況はそれぞれでも、真剣にチャレンジをしていることです。それぞれ、今の事業を行う必然性があります。ESPREはこれからも、上記のような課題の解決にも取り組みながら、一人一人の起業家の支えとなっていきたいと思います。
第2次募集の開始
上記の通り、すでに数名、支援の検討をお待たせしています。そこで、明日から第2次募集を始めます。今回は募集期間は1ヶ月強としていますが、ご相談いただいた難民起業家から順次、検討を行います。
なお、今後の支援を行うにあたって、大きな制約条件は資金面にあります。まだ、当社団として有効な広報アプローチを見いだせておらず、融資及び経営支援のための十分な資金を獲得できていません。これまでの成果や目指す難民・社会の状況について分かり易くまとめ、引き続き各方面へのアプローチを行う予定です。
これから、支援の様子などを適宜、ご報告をしていきたいと思います。どうぞ今後、ご支援のほどよろしくお願いいたします。