※ 以下は、不定期にメールでお送りしている”ESPRE Update”の2017年2月7日の内容です。
 こちらからぜひご登録ください

お世話になっております。ESPREの吉山です。
旧年中は難民起業サポートファンドESPREをご支援いただき、誠にありがとうございました。

今年3月で、設立6年目を迎えます。ここまで続けてこられましたのも皆様のご支援のおかげです。
改めて感謝申し上げます。

これまでの皆様からのご支援・ご寄付のおかげで、昨年は計4件の融資支援を行うことができました。

相談件数も次第に増え、起業家の方からのニーズも多様化してきています。ESPREもこれまで蓄積してきたノウハウをもとに、さらにステップアップする時期に来ていると考えています。

本日はご支援へのお礼とともに、これまでの実績・活動のご報告と、これからのESPREの展望についてご説明させていただきます。

どうぞ最後までお付き合いください。

※ 2016年にご寄付を頂戴した皆様(ReadyFor? でのご寄付をいただいた方々を含みます)には、寄付金への領収証とともに、このメールと同じ内容の手紙をお送りしております。
当会へのご寄付は、寄付金控除の対象となりますので、ぜひご開封ください。

[目次]
1.昨年の実績と案件のご紹介
2.これまでの実績と成果
3.今年度後半(6月末まで)の見通し
4.よりよい支援のために
 1)融資支援基準・体制について
 2)経営支援体制の改善への着手
5.ご支援のお願い

1.昨年の実績と案件のご紹介

昨年は6月に2件、10月に2件、合計4件の融資を実行することができました。6月の融資先は、中古車取引を始められた方と、スマートフォンアプリの開発をされている方、10月の融資先は、2件ともレストランを経営されている方です。融資金額はそれぞれ、60万円、20万円、100万円、100万円です。詳しくは、昨年にメールでもご報告をし、ESPREホームページでもご報告させていただきましたので、ご一読いただければ幸いです。

4件の融資先のうち、10月に融資したレストラン経営の方(Aさん)の案件について、少し詳しくご報告させていただきます。

Aさんは日本に来られてまだ数年ですが、日本に逃れてこられる前には、中東にて自らの事業もされていたと言います。これまで働いて貯めてきた資金を元手に、中東〜インドの料理を提供するハラル・レストランを開業したいと準備をされてきました。お住いの地域にも、関東圏にも納得のいくハラル料理店がないと考えられて、強い思いを持って開業を決意されたのです。ご本人はこれまでの事業経験や人脈を生かし、ご自身で事業計画を立て、相当のスピードで準備のために積極的に行動されました。保健所の許可や、看板の発注、シェフなど従業員の確保も着実に進められましたが、店舗の改装や機材の調達などの資金がどうしても不足し、支援を求めてこられました。

ESPREにご相談をいただいてからは、収支計画などを議論し、準備中の店舗にも訪問して近隣の状況なども視察し、何度もインタビューを実施した結果、融資を判断しました。最終的には、収支の見通しには不確実なところが多いものの(どのような事業でもそうですが)、着実に準備を進められていることと、事業への想いやコミットメントが強いことから、融資審査委員会にて融資が承認されました。そして無事、11月末に店舗をオープンすることができました。

先日、オープン後の状況を把握すべく訪問しました。訪問したのは平日のランチタイムでしたが、1時を過ぎる頃から来店客が増加し、10人以上の顧客が来られていました。ランチメニューも手ごろな値段でボリュームもあり、満足できる味です。まだ繁盛というまでには至りませんが、それなりに来店客もあり、順調な滑り出しと言えます。目の前の国道を通る車からも目を引きます。今はムスリムの方が中心でしたが、今後口コミが広がり、近隣の日本人客の集客もできるようになれば、さらに経営も安定してくると思われます。ESPREとしても、経営がより安定すべく、支援を続けていきます。

Aさんのようなケースは、ESPREが想定している難民起業家の方の典型とも言えます。一昨年までは、すでに起業されている方への支援が多かったのですが、今後Aさんのように、起業前の準備から、起業後の経営支援まで、一貫してフォローするようなケースが増えてくると思われます。また、今後順調に業績が上向いていくことができれば、これから起業しようと考える難民の方へ、成功事例として紹介することも可能になると期待もしています。

2. これまでの実績と成果

これまでの5年間にESPREに融資の相談に来られた「難民起業家」は32名にのぼります。中には複数の案件で相談に来られた方もいらっしゃいます。このうち、融資審査の対象となったのは11件、実際に融資を実行したのは、昨年の4件を含め7件です。融資金額の合計は534万円になりました。

[各年度の融資実績:2015年度、2016年度は各年度2件の融資を実行しており、2012年度以降の融資総額は534万円に]2012年、2013年に融資した2件については、すでに返済が完了しており、回収した資金は次の融資先への貸付原資として活用しています。昨年融資した先についても、すでに返済が開始されました。融資により、事業を始めることができた方、経営状況が改善し、生活が少しですが上向きになった方、経営危機をなんとか乗り越えられそうになっている方など、みなさん着実に前に進んでおられます。ESPREにとって第1号の融資先であるアセフさんなどは、着実に事業を拡大され、当初支援をした中古車輸出から、繊維製品の輸入などにも事業を広げられ、今では従業員も増えています。(2013年当時のアセフさんについての記事)

一方、2012年3月の公益認定後、昨年末までのご寄付は、145名の方々から総額7,657,161円になりました。その中には、個人で相当のご寄付をくださった方もいらっしゃいますし、2015年の秋から冬にかけて実施したクラウドファンディングによる総額207万円のご寄付も含まれています。

皆様には改めて、多大なご支援をくださったことを御礼申し上げます。ご寄付いただいた資金は、融資原資のほか、融資前後の難民起業家への支援を中心とした事務局経費に充てさせていただいています。

3.今年度後半(6月末まで)の見通し

次の融資審査対象となりうる案件が、現時点で3件ほどあります(今年度=6月末までには、今後新たに受けるであろう案件も含め、2件は融資を実行したいと考えています)。

レストランを準備されている方だけでなく、エンジニアとしてのスキルを活かした事業を考えておられる方など、業種にも幅がでてきました。昨年実施した難民起業家向けのセミナーや(今年も行います)、すでに起業されている方からの紹介、難民支援協会の就労支援を受けている方からの相談などで、難民の間でのESPREの認知度も徐々に上がってきているようです。難民を受け入れている国々では難民の起業家としての活躍事例は多くありますが、日本においても今後大きな可能性があると感じています。

なお、昨年の4件の融資のうちAさんを含む2件がそうですが、最近では北関東など、若干遠方にお住まいの方からの相談も寄せられています。遠方の場合、どうしても面談頻度が減ってしまうなど、起業前後の支援が限定的になりがちですが、難民が集住している地域もあり、ニーズがあります。現場をお手伝いいただける方も見つけながら、支援の手を広げていきたいと考えています。

4.より良い支援のために

ここまで、これまでの実績や今後の見通しを述べてきましたが、昨年は支援を拡大すると同時に、振り返りを行い、体制の改善にも着手しました。その主なものが、1) 融資審査基準・体制の明確化と、2) 経営支援体制の改善です。

1)融資審査基準・体制について
融資には、審査が必要です。ESPREでは融資の相談があると、まずESPRE事務局で詳細なヒアリングを行います。事業として明確になっているか、起業家の方が経営者としてどんな人物なのかなど、ヒアリングを重ねたり、すでに事業が始まっていれば経営支援から始めたりしながら、信頼関係を醸成し、理解を深めていきます。その過程で、当初申し出があった資金ニーズではなく、経営改善のためによりプライオリティの高いニーズを掘り起こすことができたりもします。また、調達可能な資金を起業家とともに見極めながら、その資金で実現可能な事業計画をともに作ることもあります。

事業内容と資金ニーズが明確になった段階で、融資審査委員会に諮ることになります。融資審査委員会は、ESPREの理事1名と外部の有識者で構成しています。現在は委員は4名で、海外から来日して起業に成功された方や会計士、NPOバンクに携わっていた方など、それぞれ専門分野も異なり、多角的に判断できる体制としています。融資審査委員会で議論する過程で、より明確にすべき点が指摘され、必要な情報の確認が求められることが通常です。その際には、事務局が宿題を持ち帰り、再度起業家とやり取りし、案件に対する議論を深めていきます。最終判断に当たっては、融資審査委員が起業家の方と面談することもあります。

なお、融資審査には基準を設けており、事業の成功可能性だけでなく、経営者の覚悟や事業と向き合う姿勢を最重要項目としています。また、ESPREが支援することの効果、融資後のモニタリング可能性、雇用につながるといった社会的意義も勘案しています。

これまでの課題としては、融資審査基準はESPRE立ち上げ時に設定していたものの、実際の運用で蓄積された経験を反映できていなかったことです。融資審査まで時間をかけすぎて、真剣に挑戦をしているにもかかわらず融資を実行できなったこともあります。逆に、必ずしもすべての融資先起業家が、期待したような挑戦をできているわけではありません。事務局と融資審査委員会での情報共有が非効率で、案件を理解しづらいといった課題も、理事から指摘されていました。

そこで、融資審査を改善すべく、昨年後半に今までの審査の実績と反省を振り返りました。その結果、基準の大枠は、上述のような当初設定した考え方で良いことを改めて認識した一方、その判断のレベル感を明確化しました。また、情報共有のプロセスを含めた内部整備も行いました。これにより、今後の案件において審査をより適切かつ迅速にできるようになったと考えています。(その結果、皆様からのご支援をより有効に難民起業家支援に活かせるようになったと考えています。)また、基準を難民起業家にも示すことで、事業を進める上での指針としても活用していただけるでしょう。

2)経営支援体制の改善への着手
ESPREでは融資に加えて、事業作りから伴走し、起業後のフォローまで、経営支援も行なっています。信頼関係の醸成のためにも重要ですし、融資先であればモニタリングにもなりますが、このような支援なくしてESPREの活動とは言えない、融資と並ぶ重要な活動であると考えています。

今まで行ってきた支援としては、例えばレストランのメニューや看板の作成のお手伝い、経理処理のお手伝いなどがあります。経理については、プロボノとしてご協力頂いている税理士とともに、帳票のつけ方から指導し、自身で売上管理をできるようになるまでサポートしたこともあります。また、多くの難民起業家と、ご本人が考えている収支計画について議論し、より現実的なものとしています。融資を完済した後も、継続的にフォローを続けており、例えば先日はあるレストラン経営の難民起業家に宅配サービス事業者を紹介するなど、さまざまなサポートをしています。難民起業家の方は単に融資の支援だけではなく、事業経営のアドバイスや、経理、マーケティング、営業など、事業全般において支援を必要とされているのです。

ただ、現状としては支援体制に限界があり、ニーズに十分に応えられているとは言えないと考えています。そこで昨年はまず、さらに専門的なニーズにも対応できるよう、経営支援委員会を発足しました。経営コンサルタントや弁護士に委員となっていただいており、融資前の事業審査へのアドバイスも含め、事務局をサポートしていただく予定です。また、引き続き経営支援のお手伝いをいただけるプロボノ・ボランティアの方々を募集し、体制を強化していきます。

5.ご支援のお願い

すでに述べましたとおり、現在でも3名の難民起業家が今後の審査の候補となっています。これからも、また新たな相談をされる難民起業家と出会えるべく、難民へのアピールも続けていきます。

これらの中から、今年度末(6月末)までにはあと2名の難民起業家に、融資を実現させたいと考えています。引き続き、新たなレストランや、技能を生かした事業、貿易業(特に日本国内での販売につながる輸入販売業)などが生まれれば、難民の生活が改善するだけでなく、活躍する難民の姿を日本社会に知っていただけるようにもなるでしょう。

先進国の一部で多文化、多様性を否定するような風潮が広がる中で、難民自身が活躍していくことがより重要になってきていると考えています。年間を通して4名の難民起業家の誕生をサポートできるようになれば、事業の多様性も生まれ、多くの人にその存在を知っていただけるようになるはずです。

改めて、このESPREの挑戦を支えてください。

より多くの融資と経営支援を実施するために、融資原資と経営支援のための活動資金の底上げが必要になっています。現状では、今年はあと1件の融資をするのが限界です。10万円集まれば、遠方の難民起業家であっても、1年間継続して訪問しながら経営支援を実施できます。100万円集まれば、融資件数を1件増やすことができます。合わせて300万円集まれば、今年予定している支援を実現できます。

自立し活躍する難民を一人でも増やしたいと考えています。どうか、よろしくお願いいたします。

ご支援には、以下のいずれかの方法をご利用ください。

1. クレジットカード:ウェブサイトから

  https://espre.org/kifu

※ なお、毎月継続して寄付を引き落とすESPREマンスリーサポーター制度もありますので、上記ページをご覧ください。

2. 銀行振込

  ジャパンネット銀行 ビジネス営業部(005)
  普通 1286420

  シャ)ナンミンキギョウサポートファンド

※ 銀行振込の場合には、今後のご連絡や寄附金控除に必要な情報が、当会まで伝えられませんので、お手数ですが、こちらから、お振込日、金額、名義、ご住所、お電話番号、電子メールアドレスをご連絡ください。どうか、よろしくお願いいたします。

なお、ESPREは公益法人として認定されているため、寄付金には最大約50%の税控除を受けることができます。

また、様々な分野でのご助言やサポートなど、皆様のスキルを必要としている難民起業家がいます。
ご支援いただける方がいらっしゃいましたら、どうぞESPRE事務局 info@espre.org までご連絡ください

今後も、より多くの方にESPRE事業の内容、難民起業家の方の現状をご理解いただき、ご支援いただけるよう、努めてまいります。引き続きご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

難民起業サポートファンド
代表理事 吉山 昌