難民起業サポートファンド(ESPRE)の初めての融資は、パキスタン出身のアセフ氏に行いました(2012年10月)。中古車の輸出を主な事業とする会社を起業、経営しています。ESPREは彼の会社に、モザンビークに消費者向けの店舗を設置して販売をはじめるにあたっての資金の一部を融資しました。

* 融資当初は、彼は匿名を希望していましたが、ご自身の経験を伝えたいということで、最近公開を許容されました。

彼は、マレーシアの大学を出た後、欧州の大学院で経営学を学んだ経験を持っています。また、大学時代にも事業を立ち上げた経験があります。ある宗教的な事情で本国に戻れなくなったことから、難民として日本へ逃れてきました。来日後早い段階から難民支援協会がサポートをしており、その後、人道的配慮により在留資格を与えられています。

来日後、当初は食品工場などでのアルバイトで苦労しながら生計を立てていました。しかし当時から、日本での起業を考えてもいたと言います。実際、来日後1年ほどたった後には、資金を貯めて都内でインド料理店を開きました。もともと飲食店の経験があったわけではありませんが、自ら料理を学び、シェフも雇って起業したのです。この店は、その後景気悪化により撤退しますが、飲食店に代わる事業としてはじめたのが、中古車の輸出でした。

中古車の輸出は、当初はオンラインでの販売を中心に行っていました。しかし同時に、友人やさまざまな出会いで得られた人脈を活かし、オーストラリア他にパートナーを獲得し、次第に売上げを伸ばします。そうした中で目を付けたのが、モザンビーク市場でした。オンラインサイトでの販売の中で、引き合いが急速に増加していたのです。

そこで、現地での市場調査を行った結果、日本からの中古車へのニーズが強く、信頼性の高い業者を求めており、貿易上の障壁の多さから競争が緩い、等の理由から、進出を判断します。ただ、問題は資金でした。ある程度の資金は貯まってきていたものの、本格的にB2Cで事業を行うには、あらかじめ車両を仕入れておかなくてはならず、運転資金が必要です。そのため、金融機関への交渉を開始していましたが、すぐに借り入れを行う事はできず、ESPREにも相談を行っていました。最終的には、ESPREと政府系金融機関からの融資を組み合わせて仕入を行い、無事事業を開始することができました。

その後、順調に事業は成長しており、モザンビークでは2ヶ店目の開設と、現地ディーラーとの取引を開始、今年度は昨年度の2倍程度の売上げが見込まれています。また、一旦撤退したインド料理店にも再びチャレンジをしたいとのこと。

現地のスタッフとアセフさん

現地のスタッフとアセフさん

難民は、彼のように機会を得られれば、活躍をできる可能性をそれぞれに持っていることを改めて認識させられます。今後もESPREは、日本にいる難民のチャレンジをサポートしていきます。